更新日:2015.09.26
執 筆:整体師 佐藤優
このページでは、
など、脳の各部分と機能についてお伝えしています。
大脳皮質は、脳の表面の部分をいいます。
すべての脳の部分の情報を受け取り、他の脳の部分をどう機能させていくかをコントロールしています。
は、特に不安との関係が強い部分です。
前頭前皮質は、
などの機能がある部分です。
特に、前頭前皮質のうち不安と関連する部分は、情動状態を意識的にコントロールできます。
情動が高まったら鎮静化して、その情動について考え、どう対処したらいいのかを決定できる部分なのです。
つまり、不安を鎮めるためには、この前頭前皮質が重要なのです。
眼窩前頭皮質は、気分や行動の制御をしている部分です。
特に、衝動的な気分や行動についてコントロールしています。
これが機能異常になると、強い衝動を制御できなくなり、異常な行動をとってしまいます。
また、強迫観念や否定的な気分をコントロールできないという問題になります。
前帯状回は大脳辺縁系と前頭前皮質の間にある部分です。
その機能は様々で、前頭前皮質の動機づけを強めたり、報酬や喜びの感情を海馬に連絡して、たとえ小さな出来事に対してでも、感情的な色合いを感じることができます。
また、前帯状回の基本的な機能は、問題解決能力や思考の柔軟さをもたらしてくれます。
ある行動をしても問題解決しないとき、前帯状回は他の解決方法を探してくれます。
前帯状回が正常に機能していると、思考が柔軟になって色々なアイデアが浮かんできます。
前帯状回が機能低下すると、動機や感情が薄まり、何事も無味無臭に感じてしまいます。
逆にこの部分が過活動になると、柔軟な思考ができなくなり、問題解決しにくくなり、つらい経験や失敗に囚われ、不安が強化されてしまいます。
大脳基底核は、
などに関与している部分です。
これは、ドーパミンという神経伝達物質の働きによるものです。
ドーパミンは興味、報酬、動機づけに関与しています。
神経伝達物質は、脳の神経同士のやりとりをさせる物質です。
大脳基底核の側坐核というところでそのドーパミンを受け取り、身体的・精神的活力をみ出します。
また、大脳基底核にはGABAという興奮を抑える、抑制系の神経伝達物質も多く存在しています。
大脳基底核が活発になりすぎると、このGABAが働いて鎮静化させてくれるのです。
このGABAがうまく機能しなくなると、ふるえやパニック発作、ストレスに対する過敏、不快な感情、怒りっぽさ、などの症状が発生してきます。
大脳辺縁系は、
などから成り立っている部分です。
扁桃体は、常に外からの刺激に対して警戒をしている部分です。
これは、新しい刺激が脅威となる可能性があるからです。
扁桃体は、脳の「初期警報システム」といわれています。
警戒をしているところですから、とりわけ不安との関わりが強くなってきます。
扁桃体は、外からの感覚情報(嗅覚・味覚・触覚・聴覚・視覚)に対して、「危険だ!」「嫌だ!」などの情動的な評価をします。
そして、扁桃体から他の脳へと伝達され、自律神経の反応を起こすのです。
また、扁桃体は何が危険なのかを学習します。
例えば、満員電車でパニック発作を起こした場合、沢山の人の中や、電車やエレベーターの中などの密室などがトラウマとなって、以降安全な環境においても、そのような感覚を感じると、前のパニック発作のような身体反応が出てくるのです。
これは満員電車の環境に似た状況を危険な刺激であると扁桃体が学習し、常にその刺激は危険であると誤認しているからなのです。
海馬は、ある出来事が「いつ」「どこで」起こったかを記憶するという機能がある部分です。
扁桃体との関連が強く、扁桃体での恐怖が海馬に記憶され、その後似たような外的刺激が加わると、危険な状況でなくてもストレス反応を引き起こすのです。
また、海馬はレム睡眠時(浅い眠り)に、左前頭前皮質にその日の重要な出来事を記憶・保管するために情報を送っています。
その働きによって、重要な情報が長期記憶として保管され、朝には海馬がリセットされて、また翌日の記憶が出来るようになるのです。
不安などのストレスで睡眠障害があると、この長期記憶と海馬のリセット機能がうまくいかなくなります。
つまり、「いつ」の出来事だったのかという時間的な解釈ができなくなり、嫌な記憶(トラウマ)だけが海馬に残ってしまうことがあります。
すると、似たようなストレスに遭遇したとき、その記憶が過去のものとして認識できずに、現在起こっているかのような感覚になるのです。
視床は、外からの刺激情報を他の脳部分へと中継する部分です。
特に、扁桃体などのその他の辺縁系への情報伝達がとても速いために、外からの刺激に対するすべての不安発生地点なのです。
視床下部は、自律神経の始まりであり、体の内部を監視・コントロールしている部分です。
視床下部は、睡眠・体内時計・食欲・渇きなどに関わっています。
この視床下部が過覚醒を起こすと、ストレス反応(交感神経緊張)が強くなり、ストレスに対して過剰に反応を起こし、不安な状態にしてしまうのです。
下垂体は「内分泌系」といって、ホルモンを作り、分泌する部分です。
ストレスを受けると、下垂体から副腎皮質というところへ指令が出て、ストレスに対する反応として糖質コルチコイド(アドレナリンやコルチゾールなど)が分泌されて、ストレスに負けないように対応させるのです。
延髄は、体の脳ともいえる本能的な脳の部分です。
我々が寝ているときでも常に活動している脳です。呼吸や心拍をコントロールしています。
橋には、青斑核という重要な部分があります。
この青斑核は、ノルアドレナリンが高濃度で存在していて、不安の形成に大きく関連しています。
ノルアドレナリンは、血圧のコントロール、脳の覚醒を促す物質です。
しかし、ストレスであまりにノルアドレナリンが多くなると、心身の過覚醒・緊張が起こり、すこしの物音で驚いてしまったり、絶えず周りを警戒しているのでヘトヘトに疲れ果てたり、緊張の糸が張りつめているので、ちょっとしたことでもイライラしやすくなります。
つまり、心身共にリラックスするのが難しくなってしまうのです。
また、橋にある神経達はレム睡眠(浅い眠り)に関与しています。
小脳は非常に多くの神経細胞があり、脳の非常に多くの部分と連絡しているために、未だ働きが解明されていない機能が沢山ある部分です。
しかし、小脳の機能で解明されている重要な部分として、外からの様々な感覚情報を統合して、体のバランス・姿勢・歩行など、動作をスムーズに行うために体を調整している働きがあります。
脳のそれぞれの部分は単独で機能するわけではなく、互いに情報をやりとりしながら機能させています。
体に癖がつくように、脳の働きにも癖がつきます。
誰にでも物事の考え方、捉え方のパターンがあり、それが脳の働きの癖になるのです。
例えば、扁桃体の働きが過剰な方は、常に外部を警戒しているので、危険を感じやすく不安を覚えやすい。
また、前帯状回の働きが過剰な方は、思考の柔軟性が乏しく、頭の切り替えがしにくいので、一度こうと思ったら、なかなか考えを改めることができなくなります。
どこか過剰なところがあると、どこかは活動が鈍くなってしまいます。
例えば、扁桃体が暴走すれば、理性をつかさどる前頭前皮質の働きが悪くなり、不安を管理することができなくなります。
脳もバランスなのです。