不安を解消する方法

更新日:2015.09.29

執 筆:整体師 佐藤優

不安に対する治療法として、主に次の5つがあります。

では、一つずつ説明していきます。

薬物療法

薬物療法は、薬物で神経伝達物質の調整をし、気分を安定させるのが目的です。
各不安障害は、それぞれ脳の過不足が起こっている部分が異なるので、それぞれに適した薬が処方がされます。

薬物療法で重要なのは、薬との向き合い方、医師とのやりとりです。


薬との向き合い方

  • 薬に完全に依存・頼ってしまう
  • 途中で服用をやめてしまう
  • 副作用が強く出ているのに、我慢して、医師に報告しない

というのはあまり良いことではありません。
服用してどうだったのか、これからどうしていくのかなど、十分に医師とやりとりをしていくと、適した薬・服用方法が見つかります。

医師とのやりとり

また、きちんと話を聞いて、説明してくれる医師を見つけるというのも大事です。
あまりピンとこない医師であれば、他の医師に掛かるのもいいでしょう。


生活リズム・思考・行動パターン

薬のことでもう一つお伝えしたいのは、薬だけでは根治は難しいということです。

今までと同じ生活リズム・思考・行動パターンではまずいわけですから、なぜ発症してしまったのかを理解して、なにか自分でも変えなければいけません。
生活リズム・思考・行動パターンを見直して、変えていく努力と覚悟が必要です。

薬を服用して気分が安定した時に、いかに今までのパターンを変えていけるのかが大事です。
つまり、薬と自分で治す。そんな姿勢で薬と付き合えたらいいですね。

心理療法

心理療法にはカウンセリングや心理セラピーなど、様々な方法があります。
それらに共通しているのは、

  1. 今までの認識・思い込みを把握して、新しい側面があるということに気づく
      ↓
  2. また、その気づいたものに基づいて、更に気づきを深めていく
      ↓
  3. そして、新たな行動を促していく

ということです。

それによって、「不安なのは、自分の心が弱いからだ」「不安はもう自分ではどうしようもない」という認識を改めて、不安に対してのコントロール感覚を持てるようになります。

重要なのは、実際の心理療法の前に、「なぜこのようなことになっているのか」という症状に対しての理解が絶対に必要なのです。
その上で、どうしていったらいいのかという方法が、心理療法なのです。

運動

運動はウォーキングや自転車、水泳などの有酸素運動が良いです。
有酸素運動によって、脳への血流が増えて、

  • アドレナリン
  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン
  • βエンドルフィン

などの適度な分泌・消費が促されます。
運動後の達成感・爽快感はこのような神経伝達物質の働きによります。

また、運動のメリットとして、自己コントロール感覚が身につきます。

自己コントロール感覚とは、その時の気分に支配されることなく、目的を持って、自分の意志でやる・やらないという選択を下せるということです。
これによって、「自分で治す」という意識が芽生えて、自己重要感が増してきます。

また、交感神経の緊張によって発生した体にくすぶっているエネルギー(肩こり・首こり・痛みなどの症状につながる)を発散させる意味でも効果的です。

食事

「医食同源」といって、体を作っているのは食べ物です。
脳細胞、神経伝達物質、ホルモンなども食べ物から作られます。
この食べ物が偏っていれば、体の機能も偏ってしまいます。

  • 体のエネルギー源である炭水化物
  • 体の構成要素であるタンパク質
  • 体のエネルギー貯蔵庫である脂質
  • 体をうまく機能させるビタミン・ミネラル

これらのバランスが重要になるのです。

とりわけ、不安に関しては脳の機能の問題が大きいので、それらに深くかかわっているタンパク質がポイントになります。

タンパク質の消化・吸収

タンパク質は、肉・魚・豆類などに多く含まれています。
このたんぱく質が消化・吸収されて、脳細胞、神経伝達物質、ホルモンを作ります。

ただし、タンパク質を多く摂っても、十分消化・吸収されなければ意味がありません。
その消化・吸収を助けてくれるのが酵素・補酵素です。

この酵素・補酵素はビタミン・ミネラルが必要なのです。
つまり、タンパク質とビタミン・ミネラルの摂取が特に重要になります。

タンパク質だけではなく、肉、魚野菜、海藻などをバランスよく食べると良いですね。

また、気を付けなければいけない物として、自律神経を乱してしまうカフェイン、血糖を上下させてしまう糖類、トウガラシなどの香辛料などは体のバランスを乱してしまうので摂取は控えましょう。

手技療法

整体やマッサージ、鍼灸などの手技療法は、体に直接刺激を加えて調整し、本来の体の機能を回復させる効果があります。

体と心は互いに強く関連しあっています。
体が辛ければ、気分も落ち込み、気分が落ち込めば、体も元気が出ません。

しかし、我々人間は、生まれてくるまでにまず体が先に出来上がります。
体という基礎があり、その上に心が乗っかっているのです。

どんなに信頼している医師からの処方薬でも、それがヒ素などの毒薬であれば、体は信頼よりも毒薬の方に反応し、死んでしまいます。

ストレスが無く、充実した日々でも、忙しくて体が疲弊すれば、どんなに心が健康でもやがて病気になります。

つまり、体の健康が重要なのです。

体が元気であれば、行動し、ストレスを発散するといったように対処ができます。
反対に、病気で体がまいっていれば行動ができません。
このように、体の状態で心の状態も変わってくるのです。

ですから、体の状態を良くしていくことで、自律神経やうつ、心を改善していくことは非常に効果的なのです。

最後に......

不安を覚えるのは、初めは何かの原因がきっかけとなる出来事があったときです。
しかし、あまりに強烈な恐怖・不安(パニック発作など)が起きればそれがきっかけとなって、不安脳を作ってしまうのです。

そうなれば、

などを常に抱えている状態になり、突然発症したりしてしまうのです。
これは、脳に思考の癖がつき、機能障害が起きているのです。

脳の機能は、

  • 養育環境
  • 生活リズム
  • 物事の捉え方
  • ストレス環境
  • 体の健康

など色々な要因で決まっています。

脳の機能障害・バランス低下は実に様々な原因で起こっているのです。
ただ単に自分の弱さがすべての原因ではありませんし、自分で対処できる範囲も限られています。

不安障害の種類でも言いましたが、不安には役割があり、ただ過剰に安全確認をしているだけなのです。

しっかり不安を理解して、治療法も薬だけに頼らずに、ご自分の意志で色々な角度から治療していかれることをおすすめします。


参考文献

  • 正しく知る不安障害(精神科医、対人関係療法専門クリニック院長 水島弘子著/技術評論社)
  • 不安な脳(Psy.D.不安障害治療第一人者 Mヴェーレンバーグ、リンデン・オークス病院精神科・医療部長 S・M・プリンツ著/日本評論社)
  • 脳画像で探る「うつ」と「不安」の癒し方(エイメン・クリニック院長 ダニエル・エイメン、医学博士・神経精神科医 リサ・ラウス著/花風社)


(C) 1996 健療施術院