怒って幸せになる

更新日:2021.05.21

執 筆:整体師 角道征史

これまでに、脳は、体の脳・心の脳・頭の脳と三層構造になっているということをお伝えしました。
それに見合った欲求や幸せを人は求めるということでしたね。

今回は、欲求や幸せを求めている人間がなぜ怒るのかということについてみていきましょう。

怒りのメカニズム

犬の場合にはあまりありませんが、猫を撫でていると、最初は気持ちよさそうにゴロゴロ言っていたのに、いつの間にか噛みついてくるということが時折あります。
これは猫が移り気だから、という話ではありません。
人間でも同様のことは起こります。

マッサージや整体で最初は気持ちよかったのに、だんだん気持ちよさが薄れ、そのうちに痛くなってくることがあります。
つまり、刺激が過剰になり、「もういいよ、不快だからやめろ!」と猫はしゃべらずに態度で示しているのですね。
自分に被害があるときに、怒っているような行動に出ているわけです。

もともと自然界においては、動物が生命の危険にさらされているとき、その危険から自分を守るために、即座に動けなければいけませんでした。
そのためにはアドレナリンをガンガン分泌させ、体と心を興奮させ、すぐに闘争、逃避行動に移れるようにしておく必要があります。
怒りは、こうした自分に害を与えるものに対して、自分を守るために沸き起こる感情であると言えます。

人間の怒り

人間の場合はもう少し複雑です。
現代の社会生活では、生命の危険はそうそうありませんが、ストレスがあるときと同様に、自分が害を被るような状況に陥ると怒りを感じます。
もっと言えば、自分の期待が裏切られたときに怒りを感じるのですね。

例えば、新型コロナ社会では、ストレス度合いが高まり、自粛警察なども出現しました。
直接的に自分が何かの被害にあったわけでもないのに、自分の期待する「人としてこうあるべき」という姿から逸脱した人に対して、怒りを覚えて、実力行使してしまったのですね。
さらにこれが夫婦や家族、パートナーなどの近い関係の場合、こうあるべきという理想の姿への期待値がさらに高まるので、簡単にイライラしてしまいます。
なぜ労わってくれないのか。
なぜ手伝ってくれないのか。
なぜ言うこと聞かないのか。
奥さんに対して、旦那さんに対して、子どもに対して、親に対して、パートナーに対して・・・

親しい間柄でも、お互いのこうあるべきと考える姿が、常識が異なるために、自分のことを蔑ろにされたと勘違いして悲しみを覚えてしまいます。 期待を裏切られたと感じてしまい、その悲しみを背景に、イライラや怒りの爆発につながってしまうのですね。

消極的承認欲求

自分が存在していいのかどうかの確信を持てない場合に、過剰に「いいね」を求めてしまうという話がありました。
そこまでは行かなくても、自分が充分に満ち足りていない場合には、認めてもらえていないことに対して、悲しみや怒りを簡単に覚えてしまいます。
怒りは自己防衛の感情であると同時に、その人の悲しみの訴えなのですね。

自分の中での常識は他人にとっての常識ではない。
だから自分の思うとおりに他人は動かない。
アンガーマネジメントの上では、そうした意識はとても大切です。

それに加えて、とりわけ親しい関係の場合には、解り合うことがとても重要になります。
親しいのだから当然わかってくれている、と考えるのではなく、自分の考えや感情、そして何を望んでいるのかをはっきりと言葉にして相手に伝えましょう。
そうすることで、もっとお互いに解り合い、また、認め合い、怒る必要のない幸せな人生にしていきましょう。


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