更新日:2019.05.21
執 筆:整体師 佐久間舞
☆「怒り」とうまく付き合う方法についてお話しています。
~ 「怒りの取り扱いかた~怒りを出して健康になる~」vol.5 ~
怒りを上手に取り扱うポイントは、自分の心と体、つまりは「自分自身を大切にする」ということに尽きます。
具体的にいくつかの方法をあげていきます。
怒りを「抑圧」することで、怒りが長引いたり、下手な表現しかできなかったり、心身の不調が出たりといった、さまざまな弊害が出ることはすでに述べてきました。
抑圧はほとんど無意識に行われるため、まずは意識に上らせてあげる必要があります。
そのためには、自分の欲求や感情に気づく、そしてそれを満たしてあげる訓練が必要です。
それにはまず、体の感覚を受け止め、体が求めていることをしていきます。
今この瞬間、自分のどちら側の足裏に体重がより多くかかっているでしょうか。
座っているならば、どちらのお尻により重みがかかっていると感じるでしょうか。
何パーセントずつの割合ですか?左が54パーセント、右が46パーセントくらいでしょうか。
左右どちらの手がより温かいですか?寒いと感じるでしょうか、それとも、暑い、もしくは頭と胴体と足は暖かく、手と首だけが冷えを感じているでしょうか。
鼻から吸った空気は、体のどこまで入ったでしょうか。
満腹が100パーセントだとしたら、今お腹は何パーセント満たされているでしょうか...。
といった具合に、表面も内臓も含めた「今」の体の状態をモニタリングします。
正解はなく、「感じる」ということが大切なので、ひとまずは感じた状態を正解とします。
暑いから上着を一枚「脱ぎたい」、お腹が空いたから「食べたい」、疲れたから「横になりたい」など、体の感覚を感じることで欲求というものが出てきます。
逆に言えば、体の感覚がわからないと、体が求めていることや本当の自分の欲求に気づくこともできないのです。
体の感覚や欲求を感じ取れるようになったら、あとはその欲求を満たすだけです。
その瞬間に満たせないような場合は、「今自分はこうしたいのだな」とじっくり受け止めてあげるだけで良いです。
さらに、しっくりこない場合は「ほんとうにこれでいい?」と自問自答してあげるのも良いでしょう。
これらのことを練習していけば、無意識に感情を押し込めて抑圧する、満たされない気持ちを食べ物で満たす、などということは徐々に減っていくでしょう。
「体」がつくる怒りのところでも述べましたが、怒りという感情と「交感神経」は切っても切れない関係にあります。
そのため、交感神経をうまく使ってあげることが怒りをうまく出す対策になります。
また、「副交感神経」をしっかり働かせることで、ストレスで疲弊した心身の回復力を高めることができます。
余裕がなく無駄にイライラしたり、いつもの悪いクセが出やすくなったり、怒りを出すエネルギーが足りなくなったり、ということを防ぎやすくします。
まずは、交感神経を意識的に使う練習です。ポイントは、「声」「筋肉運動」「姿勢」です。
できるだけ大きな声を出します。
カラオケで思い切り歌うでも、自宅で布団をかぶって叫ぶでも、何でも構いません。
怒鳴るとき、飛び上がるほど嬉しいときなど、大きな声を出したくなるときというのは、交感神経の働き時です。
できるだけ大きくたくさん体を動かします。
体を活動的な状態にするのが交感神経ですから、運動に応じて活性化します。
相手を殴りたいくらいに怒っているとき、不安でじっとしていられないときなど、体を動かしたくなるときも交感神経の働き時です。
体の安定は心の安定につながります。
また、安定した良い姿勢というのは、適度に力が抜けていて、呼吸が自然に大きくできる姿勢でもあり、酸素というエネルギー源を絶えず供給できます。
姿勢の安定にいちばん重要なのは、足裏を地面にしっかりとつけることです。
これを「グラウンディング」と言います。
心身をより安定させることで、感情と自律神経の手綱を引きやすくなります。
何事も行動するにはエネルギーが必要です。
怒りに気づくにも、何かしらの対策をするにも、外に出すにも、多くのエネルギーを使います。
そのため、まずはしっかりとエネルギーを溜められる、回復できる体にしておくことが最優先です。ポイントは、「呼吸」と「脱力」です。
「腹式呼吸」には、体をリラックスさせて副交感神経を活性化させる効果があります。
お腹が上手に膨らんだりへこんだりしなくても、大きくゆっくり呼吸をすれば大丈夫です。
とくに息を「吐く」ときにリラックス効果が期待できますので、ゆったりと少し長めに吐くことを意識しましょう。
そうすれば、そのあとは自動的にたくさんの空気が入ってくるはずです。
肩が上がっているなど力の入っている場所が分かればそこを、わからなければ自分で抜く場所を決めて脱力させます。
肩や腕、足がやりやすいでしょう。
一度わざと力を入れ、そこから一気に緩めます。
肩ならば一度ぐっとすくませてから落とす、腕ならば手をぐっと握って緩める、数センチ持ち上げて落とすなどします。
できるようであれば、呼吸に合わせ、息を吐くときに全身または一部の力を抜くというのも効果的です。
ため息をつくときに力が抜けるのをイメージするとやりやすいかもしれません。
体がリラックスモードになり、副交感神経が働きやすくなります。
自律神経をバランスよく柔軟に働かせることができると、ストレス耐性も高まり、ホルモン調節にもエネルギーを回せるようになります。
また、「抑圧」するのに使われた筋肉の緊張を取り除くためにも、自律神経の働きが重要です。
怒りと上手に付き合うには、自律神経を活性化させることが必要なのです。
考え方のクセは、ストレスが多いときなど、自分に余裕のないときにより強く出てしまう傾向があります。
また、怒りを抑え込んだりしたりルール違反を許せなかったりというパターンは、交感神経を使うのが苦手で怒れない、「許す」という副交感神経的な思考ができないといった特徴があります。
いずれも、自律神経が深く関わってきます。
そのため、まずは「体」の対策、自律神経を活性化させることが重要なのです。
ここでは、頭(思考)の対策として「境界線を引く」ということを述べます。
自分は自分、人は人。ここまでは自分の問題、ここからは相手の問題。
何も言わずに全てわかってもらえる、こちらの期待通りに相手が動いてくれるということは普通ではありません。
なぜなら自分と相手は別の人間だからです。
人と比較しすぎる、問題の切り分けができていない、相手に期待しすぎる。
このような思考は、自分と周りの境界線を曖昧にし、不満や怒りを生み出しやすいものです。
まずは、このような考え方のクセがないかどうか振り返り、自分と周りの「境界線」を意識してみましょう。
なお、前に述べた「グラウンディング」(足裏を地面にしっかりつけて安定させる)の姿勢は、自分の心身が安定するので、周りとの境界線というものを意識しやすくなります。
アサーションとは、自分も相手も尊重しながら、しっかりと自分の気持ちや言いたいことをわかりやすく相手に伝えるためのコミュニケーション手法です。
元になっている言葉の「アサーティブネス(Assertiveness)」には、積極性、自己表現、意見表明といった日本語訳があてられます。
自分の言葉で怒りや不満を上手に表現することで、相手にわかってもらえる、要求が
伝わりやすくなるなどという効果があります。
気持ちを受け止めてもらったことを実感できれば、怒りはそのほとんどの役目を終えるでしょう。
ここでは、アサーションのポイントのみあげていきます。
など、「私は」という主語を置き、気持ちや要望を述べる。
控えめな「AC」タイプや、穏便を好む「副交感神経」タイプには苦手なことかもしれません。
主語をきちんと据えることで、より「自分」の気持ちや欲求を大切にすることにつながり、自己尊重感を高めることにもなります。
DESCの内訳は下記通りで、各要素を入れながら話をすることが重要です。
〔例〕 約束の時間に連絡なしで遅れてきた友人にイライラ。
※左にスライドできます。
事実の共有 | 「今日の待ち合わせは11時だったよね?」 |
---|---|
気持ちを表現 (主語あり) |
「連絡がないと、何かあったのかなとか心配になるし、 |
具体的な依頼 | 「遅れるなら、わかった時点で連絡してほしいよ」 |
選択に応じて応答 | (わかった)「ありがとう」 |
このような伝え方であれば、感情と理性のバランスもとれ、相手を非難せず、自他ともに尊重し、対等なコミュニケーションが生まれます。
もちろん状況が好転すればこの上ないですが、まずは伝えること、表現することに意義があります。
これらができて初めて、「自分の怒りをうまく取り扱えている」と言えるでしょう。
怒りに限らず、自分の感情を無視せず大切にすることは、自分自身を大切にすることと同じことです。
怒りをたくさん感じられる人は、喜びもたくさん感じられます。
自分の怒りと上手く付き合って、より豊かな人生にしていきたいものですね。
参考文献