更新日:2018.06.26
執 筆:整体師 佐久間舞
☆女性ホルモンと月経(生理)の関係についてお話しています。
~ 「女性ホルモンと自律神経の深い関係」vol.2 ~
月経とは、子宮内膜からの出血が周期的に起こることをいい、およそ1か月の間隔をおいて、一定の日数続いた後に自然と止まります。
妊娠と出産を経て子孫を残すため、女性に自然に備わったしくみと言えます。
この月経と月経のあいだの周期の中で、主に女性ホルモンの働きによって、子宮や体全体が妊娠とその継続が可能な環境へと徐々に準備されていきます。
しかし、妊娠がなければその環境はいったん不要となり、次のタイミングに備えてお掃除とリフォームが行われます。
そこで出る廃棄物を処理しているのが月経なのです。
通常、月経開始日を1日目とし、次の月経開始前日までを1サイクルとして月経周期と呼びます。
月経周期は25~38日、月経の継続日数は3~7日が正常範囲とされています。
※左にスライドできます。
卵胞期 | 排卵期 | 黄体期 | 月経期 | |
---|---|---|---|---|
エストロゲン | 徐々に上昇 |
ピーク |
低→高→低 |
低い |
子宮内膜 | 増殖し厚くなる |
分泌期に移行 |
分泌期 |
剥がれ落ちる |
基礎体温 | 低温期 |
最低温期 |
高温期 |
低温期に移行 |
その他 | 卵胞の成熟 |
黄体形成ホルモンがピーク→排卵 |
黄体形成 |
卵胞刺激ホルモン分泌 |
月経後、排卵までの期間が卵胞期です。
卵子は「卵胞」という袋のようなものに包まれた状態で卵巣の中に存在しており、卵子が卵胞から飛び出て卵巣から卵管へ放出されることを排卵といいます。
そして、「卵胞刺激ホルモン」によって成熟した卵胞から分泌されるのが卵胞ホルモン「エストロゲン」です。
エストロゲン作用により、子宮内膜は増殖して厚くなり、血流量を増やして着床の準備をします。
一定量のエストロゲンが分泌されると、「卵胞刺激ホルモン」の分泌はいったん止まり、同じく下垂体前葉から今度は「黄体形成ホルモン」の分泌が始まります。
「黄体形成ホルモン」の分泌が上昇してピークを迎えると、その作用によって卵胞から卵子が飛び出て排卵が起こります。
これを機に、エストロゲンは減少へ、プロゲステロンは増加へと切り替わります。
また、基礎体温【※】は最も低くなりやすく、ちょうど低温期と高温期の境目となります。
卵子が飛び出たあとの卵胞は、「黄体」という物質に変わります。
その黄体から分泌されるのが黄体ホルモン「プロゲステロン」です。
プロゲステロン作用により、子宮内膜は着床後の妊娠維持のために腺などが変化する「分泌期」と言われる状態に移行します。
また、プロゲステロンには体温調節の中枢(視床下部)へ働きかけて体温を上昇させるという作用があるため、黄体期を通して高温期となります。
※基礎体温:人の活動が最低限の生命維持状態にあるときの体温。
通常は朝目覚めた直後の横になった状態で口腔内を測った温度を基礎体温とする。
月経は、子宮や卵巣の周りだけで完結するものではありません。
その始まりは脳の「視床下部」というところで起こります。
視床下部から分泌されたホルモン「ゴナドトロピン放出ホルモン」は、同じく脳の「下垂体前葉」に働きかけ、卵子を包んでいる卵胞を刺激するホルモン「卵胞刺激ホルモン」、排卵後の黄体をつくるホルモン「黄体形成ホルモン」をそれぞれ分泌させます。
これらが卵巣に働きかけて初めて、卵巣から女性ホルモンが分泌されるのです。
しかし、単に次の器官へ働きかけるだけでは、その分泌量や周期のコントロールはできません。
そこで、主にエストロゲンが上位の器官に対して「濃度がこのくらいなので、ホルモンを減らして(増やして)」というように働きかけます。
このようなしくみは「フィードバック機構」と呼ばれ、分泌量などを適切にコントロールするため、女性ホルモンをはじめ体内の様々な機能で見られるものです。
なお、月経の始まりをコントロールする「視床下部」は、様々な機能の中枢を担っており、代表的な機能として「自律神経のコントロール」があげられます。
ストレスが掛かると月経周期が乱れることがよくありますが、それは月経の中枢とストレスに反応する自律神経の中枢が同じであることが大きな原因となっています。
日本人の正常な月経の範囲は、
とされています。
これらの範囲に対して大幅にずれがあれば、月経異常とみなされる可能性が高くなります。
ただし、思春期や更年期など、月経が不安定になりやすい期間についてはこの限りではありません。
月経は妊娠のためのしくみであることから、月経の異常は不妊につながってしまいます。
また、脳の中枢を介した自律神経への影響や、ホルモンによる体全体への影響も見過ごせません。
妊娠を望む望まないにかかわらず、自分の月経の状態をしっかり把握し、異常があればしっかりと検査や対処をしましょう。
ここでは、代表的な月経の異常についてそれぞれ簡単にまとめます。
思春期以前・妊娠中・産後・授乳中・閉経後の期間以外にもかかわらず月経が見られないものは「病的無月経」とされます。
おもな原因としては、月経にかかわるホルモン分泌の異常があげられます。
何らかの要因によって、脳(視床下部、下垂体前葉)や卵巣のホルモン分泌が障害され、月経のメカニズムのどこかが途切れてしまうことで、月経自体が起こらなくなってしまいます。
薬剤の中には、「プロラクチン」(乳腺刺激ホルモン)の血中濃度を高める(高プロラクチン血症)ことで間接的に月経のホルモン分泌を乱す作用をもつものがあるため、服用中の薬がある場合にはその影響を確認する必要があります。
特別な病気が無くても、体への大きな負担(激しい運動、手術、大幅な減量など)がかかると、自分を守るための緊急反応として月経が無くなることがあります。
なお、女性ホルモンの原料はコレステロールなので、極端に脂肪を減らすような運動や減量は女性ホルモン量の低下につながってしまいます。
また、精神的なストレスは視床下部の機能低下を起こし、無月経の原因になります。
月経周期が39日以上になるものをいいます。
黄体期(安定した基礎体温の高温期)が14日ほど続いていれば、卵胞の成熟に時間がかかるだけで排卵はあるため、問題ないとされます。
そうでなければ、無排卵の可能性が高く、ホルモン分泌の異常や慢性全身性疾患により起こります。
月経周期が24日以内になるものをいいます。
卵胞期が短い場合は卵胞の成熟が不十分な可能性があります。
黄体期が短い場合は後に述べる「黄体機能不全」にあたります。
どちらの期間の短縮かは基礎体温によっておおよそ判別できます。
視床下部以下の月経調節機構のいずれかの機能障害が考えられます。
月経周期の変動が7日以上のものをいいます。
無月経、希発月経、頻発月経が交互にあるいはランダムに起こるような状態です。
それぞれの周期異常の原因をつぶしていく必要があるでしょう。
月経日数が2日以内のものを過短月経、経血量が異常に少ない(20ml以下)ものを過少月経といいます。
これらの原因は共通していて、多くは同時に起こります。
何らかの疾患やホルモンの分泌不足により、排出されるべき子宮内膜が十分に発育していない、あるいはそもそも存在しないことで起こります。
月経日数が8日以上のものを過長月経、経血量が異常に多い(140ml以上)ものを過多月経といいます。
これらの原因は共通していて、多くは同時に起こります。
なお、過多月経の場合は貧血となってだるさや不快感が顕著にあらわれたり、レバー状の塊が多くできたりといった状態がみられます。
子宮筋腫や、子宮内出血を起こすような疾患(子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮体がんなど)、血液疾患が原因となります。
また、プロゲステロンの分泌が不十分だと、子宮内膜がいっぺんに剥がれ落ちきれずに月経が長引く原因となります。
規則的に月経はあっても、排卵が無い場合があります。
排卵後に形成されるはずの黄体が形成されず、プロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されません。
このため、基礎体温の高温期がみられず、子宮内膜の環境も分泌期といわれる状態になりません。
毎回排卵がないという場合もあれば、あったりなかったりという場合もあります。
本人としては通常の月経との違いがわからず、病院での検査や基礎体温の確認などで初めて認識することになるでしょう。
おもな原因は無月経とほぼ同様です。
黄体は通常14日程度は退縮せずに存在しますが、早めに退縮してしまったり、ホルモンを十分に分泌できなかったりと、その機能が発揮できていない場合があります。
黄体が正常に機能していれば基礎体温の高温期が安定して10日以上維持されますので、不安定であったり短い場合には黄体機能不全を疑います。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は着床や妊娠の維持に必要なホルモンであるため、不妊の可能性が高まります。
はっきりとした原因は不明の場合が多く、ほかの月経異常と同様にホルモン分泌の異常や脳の一部機能障害などの原因が重なりあって起こるとされます。
このページでは、「女性ホルモンと月経(生理)のしくみ」についてお伝えしました。
次の「女性ホルモンの乱れと月経(生理)にともなう不調」では、女性ホルモンと月経(生理)に関する不調についてまとめています。