更新日:2017.05.15
執 筆:整体師 佐久間舞
☆原因不明の吐き気や嘔吐と自律神経の関係についてお話しています。
~ 「原因不明の吐き気や嘔吐は、自律神経の乱れが原因だった」vol.1 ~
乗り物酔いや二日酔い、食べ過ぎ、悪阻(つわり)...。
吐き気や嘔吐は、誰もが一度は経験のあることでしょう。
この吐き気や嘔吐が、病気などの明らかな理由もなく続いたり頻繁に起こったりすることがあります。
原因はストレスによる「自律神経の乱れ」です。
そもそも吐き気や嘔吐はどのようなもので、どのようにして起こるのでしょうか。
吐き気のことを「嘔気(おうき)」や「悪心(おしん)」とも言います。
いわゆる「吐きそう」という感覚のことです。
肋骨の下あたりから喉にかけて生じる不快感で、「むかつき」などと表現されます。
食欲が低下したり、多量の唾液が出てきたり、冷や汗が出たり、顔色が悪くなったりなどの反応を伴うことが多くあります。
胃の中のものを反射的に口から吐き出すことです。
食道、胃、十二指腸、横隔膜、腹筋などの各臓器や筋群が協調して反射運動を起こします。
「反射」というだけあり、必要に応じて各所が動くので、自ら意識してコントロールすることはできません。
嘔吐は、腐った食物や毒物が胃に入ってきたとき、それらを自動的に排出させることで有害な物質が腸まで届くのを防ぐための、体に備わった防御反応なのです。
吐き気や嘔吐が起こるのは、自律神経の大元である延髄(脳幹の一部)に存在する「嘔吐中枢」というところが刺激されたときです。
吐き気のみが起こることもあれば、吐き気がしないでいきなり嘔吐のみが起こることもあります。
何らかの刺激を受けた嘔吐中枢は胃や食道、腸や腹筋などに命令を出し、嘔吐にかかわる一連の臓器や筋肉を吐きやすい状態にします。
具体的には、以下のような一連の動きが起こることで嘔吐に至ります。
入口(口側)が緩む、出口(腸側)が締まる、逆流する、という動きがほぼ同時に起こるのですから、吐き気や嘔吐の、あの「自分ではどうにも抑えられない」感じが起こるのも納得がいきますね。
なお、この間に舌が後方へ引かれて軟口蓋(鼻と口を隔てる部分)が上がることで、鼻への通路が塞がれます。
これにより鼻への逆流がなく、また③深く息が吸われた咽頭(声門)が閉じ、腹筋や横隔膜が収縮する働きによって気管に入ることも防いでいます。
このように、吐き気や嘔吐は自分の体を守るための防御反応として、数多くの臓器や筋群を働かせて起こるのです。
吐き気や嘔吐を引き起こす「嘔吐中枢」を刺激する経路は非常に多くあります。
そのため、様々なきっかけによって吐き気や嘔吐が引き起こされます。
主な経路と刺激のもとは以下のとおりです。
※左にスライドできます。
分類 | 経路 | 刺激のもと |
---|---|---|
中枢性嘔吐 |
物理的な嘔吐中枢への刺激や圧迫 |
脳腫瘍などによる脳圧の高まり、 脳の血行障害など |
嘔吐中枢や化学受容器引き金帯(CTZ)※1への化学的刺激 |
毒物・薬物の摂取 腎機能低下や糖尿病などの代謝障害や内分泌(ホルモン)障害によって体内で作られた老廃物や毒素 酸素不足、感染症、二日酔いなど |
|
反射性嘔吐 |
舌根や咽頭(のど)の刺激(舌咽神経経由) |
指や歯ブラシなどによる舌やのどへの物理的刺激 |
胃粘膜の刺激(自律神経経由) |
腐敗物や毒物・薬物の摂取、細菌侵入、 大量飲酒、暴飲暴食 胃炎、胃潰瘍、胃がんなど |
|
各種臓器(腸粘膜、肝臓、心臓、子宮・卵巣など)の刺激 |
各種臓器の機能障害、機能低下など |
|
感覚器官(味覚・嗅覚・視覚・聴覚)の刺激 |
悪臭、嫌いな味、不快な映像、不快な音など |
|
平衡器官(前庭・三半規管・小脳)の刺激 |
めまい、メニエール病、乗り物酔いなど |
|
精神性嘔吐 |
大脳皮質の神経刺激 |
ストレス、精神的苦痛、不安や恐怖などの感情、ヒステリー、神経症など |
※1)化学受容器引き金帯(CTZ)...血中の薬物や毒物に反応する脳幹領域。この部位の興奮は近くに位置する「嘔吐中枢」へ伝えられます。
広義では嘔吐中枢の一つとして捉えられています。
嘔吐中枢の周辺には自律神経の働きである血管運動、消化管運動、呼吸、唾液分泌などを司る中枢が位置しています。
そのため、吐き気や嘔吐の際には顔面蒼白、血圧低下、食欲不振、発汗、唾液分泌亢進などの自律神経症状を一緒に引き起こします。
このページでは、「原因不明の吐き気や嘔吐は、自律神経の乱れが原因だった」についてお伝えしました。
次の「吐き気や嘔吐は、自律神経の乱れによって起こる」では、自律神経の機能、自律神経が乱れるとなぜ吐き気や嘔吐が起こるのかについてまとめています。