更新日:2014.07.15
執 筆:整体師 田島健次
口の乾燥だけではない、ドライマウスの症状
~ 「ドライマウス」vol.1 ~
ドライマウスと、うつや自律神経失調症の関係を紹介しております。
あなたは日常生活の中で口が乾く、喉が渇く、口臭が気になるという事はありませんか?緊張した場面ですと、口が乾いて唾が飲み込みづらくなる事は、誰でも経験した事がありと思います。その状態が日常生活の中でずっと続くようことをドライマウスといいます。他にも口の色々な症状を訴える人が、近年増えている傾向にあります。
ドライマウスは、少し前は「口腔乾燥症」と呼ばれていて、口が乾く症状として認識されていたのですが「生死に関わるような病気ではない」と言う事であまり、ドライマウスは研究されずに注目されませんでした。
口の辛い状況を医者に相談しても「老化のせい」「気にしすぎ」と言われドライマウスの対処方法も「水をよく飲んでください」ぐらいで、困っていた人も多かったようです。最近では、ドライマウスがマスコミ等に紹介されるようになり注目が集まり、医者や患者さんの理解が高まっています。
特に現代社会は、QOL(※)の向上を目指すよう意識が高まり、ドライマウスを我慢しないで改善しようというスタンスに変わっているので、ドライマウスを理解する事が大切と思います。
(※)一般的にQOLは、人が充実感や満足感を持って日常生活を送ることができることを意味しています。QOL = Quality Of Life
「現代病」ドライマウスの原因とは?
日本ではドライマウス患者は推定で800万人、予備軍で3000万人です。ドライマウスは「現代病」といってもいいと思われます。「現代病」とは、様々ありますが代表的なのが、自律神経失調症やうつです。
ドライマウスのような「現代病」の原因は過剰なストレスです。ストレスが多いことで自律神経が乱れ、不眠・めまい・顎関節症・動悸・便秘や下痢などの身体的症状が現れ、その後にうつ状態・無気力・適応障害と心の病までに至ります。
ドライマウスの他に口腔内のトラブルは、顎関節症や舌痛などがあり、これらを「口腔心身症」といい主に「噛みしめ(食いしばり)」も原因の一つとされています。「噛みしめ」は、人がストレスを感じた時に、それを解消しようとして行う無意識の心理反応だそうです。
ストレスを受けると、体はそれに抵抗しようとエネルギーを出します。しかし、現代のストレスの多くは精神的ストレスであり、体を動かしてエネルギーを消費することはほとんどありません。そのため、「噛みしめ」という行為でストレスによるエネルギーを発散しているのです。
噛みしめるとどのようなことが起きるかと言うと、まず顎や歯に負担になり顎の筋肉が緊張して口が開けづらくなります。また、歯は知覚過敏や歯が欠けるとなどが起きます。もっと重要なことは、噛みしめる事により首周りの筋肉が硬くなり血管が細くなり、脳への血行が悪くなることにより自律神経が乱れやすくなります。
そして更にストレスを感じて、また噛みしめてしまうという悪循環に至ります。そのため、噛みしめなどの口腔内のトラブルを改善させることにより、うつや自律神経失調症の病気も軽減させ、悪循環を断ち切ることが出来ます。
ドライマウスとは、口腔内の唾液の分泌量が低下して、口の中が乾燥状態になることです。例えばお酒を飲んだ翌朝や鼻が詰まり口で呼吸して寝て起きた時、または、冬の乾燥した時期に喉のカラカラ感を感じますが、ドライマウスはその状態が続きます。他にもドライマウスの口腔内の特徴には下記のものがあります。
口は、消化器であるのと同時に感覚器で非常に敏感です。そのため、口に砂が入るだけでも非常に不愉快になります。こうなると、食事やおしゃべりも制限され、これが毎日続いたらどれだけ生活の潤いが低下するだろうか、想像してみてください。
一時的に口が乾燥することは、誰でもあると思いますが、全てがドライマウスではありません。以下で、ドライマウスを見分ける簡単なチェック項目をご紹介します。 (ドライマウス研究会が作成した物です。)
ドライマウスチェック1(口)
ドライマウスチェック2(目)
ドライマウスチェック3(関節)
ドライマウスチェック4(生活)
該当するからといって、ドライマウスであると断定はできないようですが、多く当てはまる方はドライマウスの可能性が高いといえます。ほぼ全ての質問はうつや自律神経失調症と同じですので、ドライマウス自体がうつや自律神経失調症の一つと考えた方がいいでしょう。
ドライマウスは唾液の分泌量の低下が起きますが、唾液が体にどのように影響し役割をしているのでしょうか。唾液は口の中にある唾液腺という所から出てきます。唾液腺は2種類あります。
口の中は、全て唾液腺に覆われています。大唾液腺は、物を食べる時や話をするときによく分泌されます。一日に1.5リットルも分泌されていると聞いてびっくりしませんか?
ドライマウスと関わりの深い、唾液と自律神経の関係
唾液を出すには、2種類の自律神経が深く関わっています。
1つは、主に活動する際に働く交感神経。もう1つは、休む際に働く副交感神経です。
この2つがバランスよく働く事により日中活動でき夜に休む事ができリズムのいい生活が送れるのです。では、唾液腺・唾液は2つの神経の働きの時にはどのような変化が出るでしょう。
交感神経、副交感神経優位時の唾液の特徴
交感神経優位の時にも唾液は少量だけ分泌されますが、その質は濃く粘り気の強い唾液になります。副交感神経優位の時も唾液の分泌は促進されますが、この時の唾液の質は薄く粘り気は少なく量も大量です。
ドライマウスに限ったことではないですが、緊張すると口の中がネバネバしませんか?これは交感神経が優位のため、濃い粘性の唾液が出ているのです。一方、ご飯を食べる時は副交感神経が働くため、大量に粘り気の薄い唾液が出るため食物を消化分解して嚥下(飲み込むこと)をしやすくして内臓の負担を減らしているのです。
まとめると、ストレス時には粘り気の強い唾液が少量しか分泌されないので、ドライマウスのが現れやすくなるのです。唾液は薄くたくさん出ることが重要なのです。なぜなら、唾液には下記の働きがありますので、唾液が少量しか出ないとドライマウスが起こりやすくなるのですね。
唾液中に含まれる、消化酵素がご飯やパンのデンプン質を糖に変え胃腸での消化、吸収を助ける役割をしています。消化酵素のアミラーゼがデンプンを分解してリゾチームがタンパク質を分解します。つまり、ドライマウスで唾液が出ないと消化不良が起きやすくなるのです。
唾液中に含まれる、ラクトフェリン、リゾチーム、ラクトペルオキシダーゼ、免疫グロブリン等の抗菌物質が細菌やウイルスを撃退する働きがあります。ラクトフェリンは、涙や母乳にも含まれ菌やウイルスなどの感染症予防に効果あるのです。リゾチームは、外部からの病原菌の侵入を抑え、口の中の雑菌の繁殖を防ぐ働きがあります。免疫グロブリンは、カンジタ菌(常在菌)の繁殖を防ぎます。
カンジタ菌は、誰でも保有していて目や膣の中にも存在していて菌が繁殖しないように共存しているのですが、免疫力が落ちたり唾液の分泌が減ると菌が増え、カンジタ症を引き起こす場合があります。口腔カンジタは、舌が荒れひび割れを起こし舌痛や唇が切れ口角炎等になり、ひどくなると深部カンジタになり誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になる可能性もあります。
つまり、ドライマウスで唾液が少ないとこのような菌やウイルスに感染する危険性が増えるのです。
粘膜を保護しているのはムチンという物質です。ムチンは刺激の強い物や熱い食べ物を食べた時に、喉や食道や胃などを傷つけるのを防いでいます。更にムチンは、胃潰瘍や胃炎の予防・改善、鼻の粘膜を丈夫してウイルスの侵入から防ぎ感染症にかかりにくくする作用もあります。
つまり、ドライマウスで唾液が少ないと口腔内からのどや食道、胃の表面を傷ついてしまう可能性が高まります。ちなみにオクラや納豆にはムチンが多く含まれています。
唾液腺の中に上皮細胞成長因子と成長因子物質があると、ノーベル医学・生理学賞を受賞したスタンリー・コーエンが発見しました。
上皮細胞成長因子と神経成長因子の作用
まず上皮細胞成長因子は、皮膚などが傷をついた時に修復する作用がある。子供の頃、傷口を舐めたり唾を浸けとけば大丈夫と親に言われた人はいますよね、これは医学的根拠があったという事です。
更に成長因子は、細胞の修復、生存を維持する作用、脳の損傷を修復する作用、脳の機能を回復し、脳の老化を防ぐ作用なども持っているのです。成長因子は、唾液中に多く含まれていて、唾液が多ければ神経の修復、脳の老化を防ぎ脳の機能が向上する。
高齢者は噛む力が無くなり、唾液の分泌量が減っていってしまう傾向があるため神経成長因子の恩賞を受けられなくなり、脳細胞の修復されなくなり脳の老化が進み記憶能力の低下が著しいのが解ります。子供の頃、親に良く噛んで食べると、頭が良くなると言われた事がありましたが、この事も噂や迷信ではなくて、医学的に根拠がある事が証明されているのです。
つまりドライマウスにより唾液が少なくなると、皮膚や粘膜の修復が遅くなり、脳の老化もしやすくなるということです。ちなみに粘膜は口の中だけでなくのどから食道、胃、十二指腸、小腸、大腸と全ての表面を覆っています。
唾液の分泌量が減れば確実に虫歯や歯周病になる可能性が高まります。虫歯になる原因は、虫歯菌の繁殖しその虫歯菌が糖分を分解して酸を作り、その酸で歯の表面を溶かすためです。歯周病も菌の繁殖が原因で、歯の土台の歯槽骨をボロボロにします。
唾液には、カルシウム、リン酸などが含まれていて、これらが歯のエメラルド質を修復してくれるのです。(再石灰化)
以上、ドライマウスについてお話していきました。引き続き、次の「ドライマウスの原因」で、その原因についてお話していきます。