心は体から元気になる!?

更新日:2020.10.16

執 筆:整体師 角道征史

季節の変わり目などでの急激な気温の変化は、ギャップが大きくなるため、自律神経への負担が強く感じられますね。

そうした負担は体だけでなく、心にも影響を与えることが多くあります。

心の不調の対策として、考え方などの精神的なところにフォーカスしがちですが、それよりも先に、体を整えていく必要があります。
その理由について、まずは脳の構造の面から見ていきましょう。

3種類の脳

脳を層に分けると、深層から表層に向かって、脳幹・大脳辺縁系・新皮質となっています。

  1. 脳幹
    生命を司っている、生体活動の根幹をなすところです。
    自律神経の中枢である視床下部もここにあります。
    体の脳であるといえます。
  2. 大脳辺縁系
    感情と記憶を主に司っています。
    心の脳といえます。
  3. 新皮質
    思考の中枢です。
    情報を統合している司令塔のようなところです。
    頭の脳といえます。

私たち人間をはじめとした生物にとって、最も大切なのは生命を維持することです。

つまり生物の活動においては、脳幹のはたらきがまず優先され、その次に大脳辺縁系、そして最後に新皮質がはたらくのですね。

ところが、私たち人間は思考を展開させることによって 文明を進化、発展させてきました。

そのため、体が嫌がっていても、心が嫌がっていても、そうした事象には目を向けずに、我慢して、頭で考えたことを優先して実行してしまうのですね。

体は疲れているけど、心はやりたくないけど、やらなきゃいけないのでやってしまう。

そうして、過剰なストレスを背負い込み、疲弊して自律神経が乱れ、脳幹によってドクターストップがかけられてしまうわけです。

こうした脳の構造とはたらきを、人間の欲求に照らし合わせて見てみましょう。

マズローの欲求5段階

「マズローの欲求5段階」とは、人間には5段階の欲求があり、低次の欲求が満たされることで高次の欲求を求めるようになる、というものです。

  1. 生理的欲求
    生きていくための本能的欲求です。
  2. 安全の欲求
    安全に暮らしたいという欲求です。
  3. 社会的欲求
    帰属の欲求とも呼ばれ、仲間を欲するものです。
  4. 尊厳の欲求
    承認欲求とも呼ばれます。認められたいという欲求です。
  5. 自己実現の欲求
    自分自身の活動や成長に対する欲求です。

こうした人間の欲求段階も、脳の構造と連動しています。

まず、体の欲求を満たします。
衣食住であったり、食欲・性欲・睡眠欲であったり、安全に安心して生活できることを求めるのです。

次に、心の欲求を満たします。
他者とふれあい、自分が人に受け入れられているのだという実感を求めるのです。

そして最後に、頭の欲求を満たします。
自分自身が納得できる生き方を求めるのです。

体から心へ、心から頭へ

食べるものがなく、死にそうなのに、恋愛や夢を優先する人はいません。
低次の欲求が満たされているから、次の欲求に移っていくのですね。

体の欲求が満たされているから、心の欲求に、心の欲求が満たされているから頭の欲求へと移行していくわけです。

ただ、人間は頭を使い進化してきたために、段階を飛び越えて高次の欲求に飛ぶことができてしまいます。
しかしながら、段階を飛び越えたとしても、 基礎がしっかりしていないと簡単に崩れ落ちてしまいます。

逆に土台がしっかりしていれば、そうそう崩れることはありません。

体のことがしっかり満たされていれば、心のことで問題が起きても持ちこたえることができます。
それとは反対に、体が満たされていない状態で心に問題が起これば、簡単に崩れてしまうのですね。

体や心が満たされていないのに、頭で考えることを優先していれば、簡単に疲弊して自律神経は乱れ、具合が悪くなってしまいます。

体をしっかり整えることで、心を安定させ、人生を楽しめるようになりたいものです。


うつ・自律神経

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