不安神経症 パニック障害

更新日:2014.07.18

執 筆:整体師 古川華奈

不安神経症の一般的な知識についてお話しています。

~ 「不安神経症」vol.1 ~

不安があると自律神経が乱れ交感神経が過剰に働いてしまいます。それが続くことで自律神経失調症の状態になり、不眠症・めまい・耳鳴り・食欲不振・動悸・息切れなどの症状が起きやすくなります。

対処法として、不安神経症もまずは自律神経を整えることが必要ですが、ここでは、当院の治療法というよりも、不安神経症について一般的な知識をお伝えいたします。

不安とは

不安とは、一体何なのでしょうか。不安は、私たちが生きていく上で誰もが経験する、心の作用です。不安の定義は、「不安とは、安心できないこと、心もとないこと、心配」となっています。別の言葉で言い換えれば、私たちが好ましくない結果を予感して、落ち着かなくなる、気がかりな状態になることだと言えます。

では、不安という心の動きは、どのような原因から起こり、私たちにどのような作用を及ぼすのでしょうか。

不安の原因

不安とは、人間が生き続けるために、さらに肉体的にも精神的にも向上していくためになくてはならない心の作用という一面をもちますが、その不安が起こるもとは、人間が肉体的、または精神的に危険な状況に置かれたときに起こる、自然な感情だということができます。

もうすこし具体的に言えば、生命や名誉、家族、財産、社会的地位など、その人にとって価値あるものが何者かによって脅かされたと感じた時に、不安が生じるのだと考えることができます。

何か大切なものが脅かされたと感じる具体的な不安に対して、原因が特定できない、いわば漠然とした動機のない不安も、私たち人間の根本的な感情として存在すると考えられます。シュナイダーというドイツの精神医学者は、「動機のない不安は人間が生きていく上での根元的な感情である」とし、罪の意識、生命の維持と健康に対する危機感、経済的な危機感が、その基本的要因になっていると述べています。

正常な不安と病的な不安

正常な不安とは、誰もが経験するものであり、人に理解をしてもらうことも出来れば、自分で原因も分かるというものです。

正常な不安とは?

  • 理由は自分で分かっていることが多い
  • 他人に説明できるし、理解してもらえる
  • 長く続かない
  • 苦痛があっても耐えられる
  • 普通に生活でき、生活習慣の変化もない
  • 消失すれば忘れてしまう

しかし、不安の程度が激しく、しかも不安が繰り返し生じて、いわば「不安にとりつかれた」状態になっている人がいます。 このような人を、病的な不安の状態にあると考えます。

病的な不安とは?

  • 理由がつかめないことが多い
  • 他人に説明しにくく、理解されない
  • 長く続く
  • 苦痛が大きくて我慢できない
  • 普通に生活できず、生活習慣が変化する
  • また起こるのではないかという不安がある

この病的な不安状態と関係する症状や徴候を、専門的には「不安障害」と呼び、アメリカ精神医学会がまとめた「精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-Ⅳ)」によれば、不安障害はパニック障害、全般性不安障害、社会恐怖、単一恐怖、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、および非定型性不安障害に分類されます。

恐怖症の特徴と病的な恐怖

不安には、先に述べたように、漠然とした不確かな要素があると言えます。これに対して、恐怖は不安より、ずっとはっきりしたものです。例えば、横断歩道を渡っている時、不意に車が走ってくるのを目にすれば、パッと危険を感じ、車にひかれないようにとっさに急いで横断歩道を渡ってしまうか、後戻りをするでしょう。

この時の瞬間的な恐怖感と、とっさの行動は、生命を救うことにつながります。 このケースのように、恐怖は私たちを守り、保護する、正常な人間の精神機能として必要なものです。恐怖と関係するものに、「パニック」があります。例えば大地震があった時のように、激しい恐怖感と驚愕反応が突然に、しかも同時に起きる状態を「パニック状態」と呼びます。

驚愕反応とは、いわゆる「腰が抜けた」状態で、目がすわって顔は真っ青になり、筋肉はこわばって手足が動かなくなり、冷や汗がでます。全身が痙攣したり、短い叫び声を上げることもあります。このような身体状態は、恐怖が激しければ、多少の個人差はあっても、誰もが経験することです。

恐怖症には、

  • 恐怖が長期間に渡って続き、一過性ではない
  • 強い恐れや苦痛に抗しきれず、行動面で恐れや苦痛の原因となる場所や物を避ける
  • この恐れが客観的に見て不合理で無意味であることに本人も気づいている
  • この恐怖の為に、ときに日常生活や社会生活に適応できなくなったり、強迫行動をとること

以上のような四つの特徴があります。

先ほど紹介した、アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-Ⅳ)」では、病的な恐怖として「特定恐怖」と「社会恐怖」の二つを挙げています。

特定恐怖

「特定恐怖」は、恐怖症の中でもしばしばみられるもので、その特徴は、ある特定の物や状況を意味もなく恐れ、それらに出会うことを極力避けることです。恐怖の対象になるものは、ヘビやクモなど嫌いな動物や、恐ろしいと感じた場所 (高い所や閉所、暗闇など)、あるいはとがった刃物や血など実に様々ですが、特定恐怖は何かの時に、これらの一つで激しい恐怖を経験し、それをきっかけに始まります。

社会恐怖

「社会恐怖」の特徴は、人前で恥をかいたり、きまりが悪い思いをすることをひどく恐れ、人が集まる場所にいることを努めて避けようとすることです。集まりに出かけても、人前で顔が赤くなる、自分の意見をうまく話せない、それを周りの人は注目して笑っているのではないかといった不安から、しばしば何もできなくなってしまいます。

不安、恐怖から不安神経症へ

不安・恐怖とは、言い換えれば身体と心へのストレスということになります。
不安・恐怖により、身体と心がストレス状態にあるときは、 ストレス時に出てくるホルモンが作用して、脳に緊張が起こります。

それがいつまでも続くと、神経伝達物質などが段々正常に分泌されなくなって、精神面にも影響が出てきます。これがひどくなると不安神経症と判断されます。ストレスによって、脳が慢性の緊張状態で正常に働かなくなった「心の緊張状態」が不安神経症だといえます。


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